東京ろまん建築巡礼・村林ビル(旧村林商店 東京都江東区) 東京の下町に突如現れるモダン建築 東京 建築

東京の下町に突如現れるモダン建築

東京・江東区の門前仲町(もんぜんなかちょう)は、江戸情緒のあふれる下町の雰囲気を色濃く残している街です。
東京都内でも有数の規模を誇る神社の富岡八幡宮と成田山の東京別院の深川不動堂が仲良く並んで門前町を形作っています。
2つの有名神社仏閣が並ぶこの街は年中参拝客で賑わっています。
このエリアの北側に隣接する清澄・白河・平野・冬木地区は各宗派のお寺が密集している「寺町」でもあります。
また江東区には「牡丹」「海辺」「永代」「越中島」など興味深い町名が残っています。

筆者が昨年このあたりを自転車で走っている時に、黒装束のユダヤ教徒の方々が続々と出てきたこと建築物があり、眼をまん丸くさせてその光景を見ていたのが今回ご紹介する「村林ビル」です。門前仲町から北西に行った「佐賀」という町にあります。すぐ近くに隅田川も流れています。

東京ろまん建築巡礼・村林ビル(旧村林商店 東京都江東区) 東京の下町に突如現れるモダン建築 東京 建築

日本各地に名建築を残した建築家の作品

建築家・関根要太郎(1889~1959)の設計によって肥料などを扱う村林商店の自社ビルとして1928〜29年ごろに建てられました。現在は劇団の練習場を経て、写真スタジオとして使われているそうです。このあたりの中央区茅場町から隅田川に架かる永代橋を渡ったあたりは江戸時代から運河が整備された一帯です。多くの米問屋や蔵・倉庫などが軒を連ねる商業の中心地でもあったそうで、現在でも誰もがよく知っている食品メーカーがたくさんあります。その時代を今に残す建築物がこの村林ビルなのです。

東京ろまん建築巡礼・村林ビル(旧村林商店 東京都江東区) 東京の下町に突如現れるモダン建築 東京 建築

この建築とユダヤの関係は?

さてこの村林ビルの正面には、ユダヤのシンボルであるダビデの星(現在のイスラエルの国旗にもあしらわれています)が龍を従えている巨大なレリーフが埋め込まれているのが特徴です。しかし、なぜここにユダヤの紋章があしらわれているのかは謎なのです。ユダヤと龍………まるでヘブライ民族がアジアの某大国を従えているかのようです。謎は深まるばかりです。東京におけるユダヤ教会堂(シナゴーグ)は渋谷区広尾にありますので、筆者が土曜日(ユダヤ教の安息日といって礼拝をする日)にここで黒装束の人々を見かけたのは何だったのか? 東京・下町のミステリー・ゾーンでしょうか。たしかにこのシンボルに何か「商売繁盛」の願いを込めた施主の意向だったでしょうか。それとも建築家・関根要太郎の思いを現したのでしょうか。そんなことを考えながら一度出かけてみてはいかがでしょうか。

〈メモ〉
村林ビル
東京都江東区佐賀
施工:大林組
東京メトロ東西線「茅場町」または「門前仲町」駅下車徒歩15分

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