古書買取人までのストーリー。仕組まれた試練その2 これはある古書店で行われているフィクションの修業物語 古書買取 古本見積 大山堂書店

これはある古書店で行われているフィクションの修業物語

「店長、昨日古書買取した書籍たち、鉛筆で書き込みが多いっすね」

「そうじゃの。だから古書買取価格もだいぶ下げなければならんかった。良い本なのにもったいない」

若い店員は、消しゴムで書き込みを消し込んでいたが、あまりの多さにぼやきだした。

「全部は面倒見きれませんから、『書込みあり』と注意書きして古書市場に出してしまいましょうよ」

「市場に出すと店売りより断然利益率が下がるからの~、慎重にせねばなるまい。価値があり消せそうなものをできるだけ活かすため選り分けておいてくれ」

その選り分けこそ、鑑定眼にもつながる大切な作業であり、店員への試練なのである。


「よし、これらの山は店売りにして、こっちの山は更に仕分けて市場に出そう」
若い店員は市場に出す出品明細まで書き終え、ようやく仕事を終えた。

「そっちが終わったら先日古書買取してきたこっちも仕分けておいてくれよ」

「マジっすか?あれまだ仕分けていなかったんすか?」

「お前のために残しておいたぞ。書き込みが残っているといけないからしっかり確認しておいてな、特に小林多喜二全集をな…」


(プロレタリア文学か…。賃金労働者階級をなんだと思っているんだ)

若い店員は安い賃金で、ボーナスさえもらったことがない境涯を自ら憐れんだ。


先日の古書買取した山を手にパラパラとめくり書込みを探す。

「あれ?どれも書込みしていそうな形跡が見当たらないぞ」

本を綺麗に使っている人の多くは書き込みを全くしないので、その方から古書買取した場合は中を確認する必要がないので楽である。しかし、その方がどこかの古書店から全集などを買った場合は、前の持ち主が書き込みをしている場合があり、経年感のある書籍や古書店の値札跡がある書籍は要注意となる。


「確か、小林多喜二全集に気をつけろって店長が言っていたっけ…」

付箋が挟まっているところに書き込みを見つけることができた。

『次は6巻の167頁』と書いてある。何のことだろうか?とりあえず消しておこう。

そして、小林多喜二全集の6巻に付箋を見つけ開いてみると書き込みが…。まさに167頁である。

「ん?この筆跡、どこかで見たことが…」

『エアコンの下の棚、ニーチェ全集第二巻の見開き』 と書いてあるのだ。

ふと、倉庫のエアコンの下の棚を見てみるとなんとニーチェ全集が。急ぎ寄って第二巻を取り出し、見開きを開くとひらひらとメモが落ちてきた。

『プロレタリア、風呂で寝たりや…』

思い出した。この筆跡は店長のものである。

倉庫奥のトイレの隣、今では使わなくなっている風呂場がある。
その風呂場の戸を開けると湯船の蓋の上に封筒が置いてあった。


開けてみて若い店員は感動の声をあげた。

「あ!ボーナスが入っている!!」

数枚のお札とともに「いつもありがとうな」というメモが添えられていた。


書込みを調べるだけだと思っていたのに、またあの店長に試されていたのだ。


若い店員の修業はまだまだつづく。

店長が次の修業のためにどんな仕組みを仕込んでいるかも知らずに・・・。

つづく。

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ちなみにうちは文学を扱ってません。哲学、仏教、心理学専門です

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