古書買取人までのストーリー。仕組まれた試練その4 これはある古書店で行われているフィクションの修業物語 古書買取 古本見積 大山堂書店

これはある古書店で行われているフィクションの修業物語

店長の古くからの友人でNさんという初老の男性がいる。

店番をしている若い店員に毎回話しかけては店を冷やかすだけで帰っていく。


「いらっしゃいませ」

「幸田露伴の次女、幸田ふみの本はあるかね?」ととぼけて聞いてくる。

若い店員は(またはじまった)と苦笑いしながら

「はい、幸田あやの本ですね」と正す。


幸田文にしても暁烏敏(「びん」ではなく「はや」)にしてもわざと間違えて
きいてくるという面倒くささ。間違えを指摘しないとあとから店長がぼやき
にくるため、裏でつながっていることは確かである。


先日は
「寛永と元禄がどちらが古いか」をわざと間違えたようにみせかけて、実は
寛永のほうが古かったと意地悪問題のように問い、また、
「中村元げん(本当は「はじめ」)さんの仏教書か、木田元はじめ(本当はげん)の
哲学書が読みたいんだけど」なんて引っかけ問題のような試し方をしてくるのだった。


その日も晴れて午後2時過ぎになった。店にお客様が減る時間帯である。

Nさんが変なものを持って入ってきた。

【右手に論語の本、左手に算盤】である。

Nさんはレジ近くまで来て、
「この両手でもうわかるよね?誰の全集が読みたいか?」
と、すでに意地悪そうな顔をしている。

若い店員は思わず「うざ!」って声に出しそうになった。


「なんすか?それ? また店長に試すよう頼まれたんすか?」

「なんだ?わからんのか?日本の資本主義の父ともいわれる渋沢栄一の言葉。
右手に理念やロマン。左手に収益性ということだわさ」

「あいにく、渋沢栄一全集はうちにはありませんよ」

そんな店員の話を聞いていないがごとく、他の棚を見ては
「へ~カラマーゾフ君って兄弟いたんだね」などととぼけたことを言っている。

このとぼけ方が店長に似ているから若い店員はNさんが苦手なのだろう。



カラマーゾフを読んだことのある若い店員は店長への反撃を急に思い立った。

店先の道端から石を拾ってきて、Nさんに渡した。

「店長に「この石ころをパンに変えてください」と伝えてください」

「は?」

「イワンが弟のアリョーシャに説明するのに必要だからと添えて」

Nさんは良くわかっていないようだが、楽しそうにその言伝を店長のもとに
持って行ったようだ。

しばらくしてNさんが帰ってきて若い店員にこう言った。

「人はパンのみにて生きるにあらず。そして【神を試みてはならない】と言ってたぞ」


カラマーゾフの兄弟の『大審問官(三つの誘惑)』の一説である。


若い店員に試されたことを店長は「試してはならない」と言いつつも
嬉しそうだったことを伝えて、Nさんは相変わらず何も買わずに帰って行った。


悪魔が、石をパンに変えてみろと試したこと、神なら飛び降りても死なないだろうと
試そうとしたこと、そして、悪魔の手下になったら権力や世界を手に入れられるという
誘惑でキリストを試したあの部分を店長も知っていたことになる。


この場合、店長は自分のことを神だと思っているのだろうか、悪魔だと思っているのだろうか。
いや、そもそも誰が何をもって神だ悪魔だと決めるのだろうか?

その答えは次回の試練で明らかにされる。

まだ何も知らない若い店員は、店長の次なる試練の仕込みに
神と悪魔をみるのであった・・・。

つづく

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次の展開は神のみぞ知る。トイレに入ったら、紙のみぞ拭く。

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