古書買取人までのストーリー。仕組まれた試練その9 これはある古書店で行われているフィクションの修業物語 古書買取 古本見積 大山堂書店

これはある古書店で行われているフィクションの修業物語

≪前回のつづき 古本見積を自分だけで(後半)≫


古い木箱に入った和装本が仏壇の近くから出てきた。

おそらくこれが今回の目玉になることだろう。いくらにつけるか・・・。

ISBN(国際基準図書番号)やバーコードがない本の査定は難しい。

店長は長年の経験から、この状態の良さ、誰にどのように売るのか、
売れるまでの予想期間(経費)と実際の売値を計算していく。

その金額が若い店員のものとどれくらい差が出るかを店長は楽しみ
にしているかのようだ。3万円以上の差が出るようなら落第だが・・・。

若い店員は白い手袋をし始めた。手に汗をかき始めたのだろう。

汗で木箱に指紋をつけてはいけないし、ましてや綺麗な和紙の
和装本を汚すわけにはいかない。

その白い手袋をみて奥様は葬儀屋でも思い出したのであろうか。
不意に仏壇にお線香を灯しはじめた。遺影にしては派手なポロシャツで、
にこやか過ぎる亡きご主人に話しかける。

「あなた。この人、今、あなたの生きてきた証に値段をつけようとしているわ」

(ん?生きてきた証?)

さっきまで「やりづらいな~」とぼやいていた若い店員はハッとした。

今、古書買取価格を決めようとしているのは和装本や書籍といった商品では
ないのではないか!そう、それは持ち主にとっては生きてきた証なのだと・・・。

お線香の香りがさらに遺品としての古書籍を再認識させる。

「チ~ン」

と、お鈴が鳴って奥様と店長までも仏壇に向けて合掌している。

若い店員にはお鈴の「チ~ン」という音が古本査定時間の終わりの
合図のように聞こえた。


いつも店長が話すような、古書をとりまく現在の環境と総評を話し、
いよいよ買取価格を伝えることになる。

この時点で店長が「いくらだ?」と内々で聞いてこないのは、若い店員
の見積額を信頼しているからなのだろうか。伝えることをあごで促すのである。


「全部で18万円です」


店長が15万円だと見積もっていたら誤差3万円の範囲だし、20万円だと
見積もっていても3万円の範囲になるわけだ。


若い店員は店長の顔色を伺う。


すると、店長は奥様の顔色を伺う。


奥様はというとドアのほうを伺っている。いったい誰か来るというのだろうか。

「バタン!」


ドアが開いたと思ったら、

「いや~!おめでとう!!ピッタリかんかんじゃないか!18万円!」


なんと遺影そのまま、派手なポロシャツの襟を立てたご主人が顔を出したのであった。


若い店員の顔は引き攣っていた。


「よかったわね。これで試練が無事に終わったじゃないの。
それではあとで約束通りうちの娘に紹介してやってよね。」


「どうじゃ?びっくらこいたじゃろ?」


店長たちは満足そうにはしゃいでいる。いつまで経ってもくどくて鬱陶しい。


若い店員はめまいがしていた。

それは死んだご主人が入ってくるというサプライズよりも、まさか買取先まで
仕込んでいた店長に「ここまでやるか」と呆れたからだ。


帰りの高速道路での車中で若い店員は無言であった。

「あのまま白い手袋で店長の首を絞めて、線香をあげるようなことにならなくて
よかった」と笑い話になるにはしばらく時間がかかった試練であった。


この日を境に一人で買い取りに出かけられるようになったわけだが、
若い店員の修業はまだまだ続く。

店長が次の修業のためにどんな仕組みを仕込んでいるかも知らずに・・・。

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