究極のエコ？古本にマーキングされていたモノ古本見積・古書買取の現場にて 大山堂書店

古本見積・古書買取の現場にて

先日、とある上品な奥様から「主人の遺した蔵書を売りたい」との電話で古本査定に向かいました。生前、ご主人は処分するならタダで読みたい人に譲りたかったらしいのですが、奥さんは古本見積・古書買取をしてもらいたかったようです。

「それでは、お預かりをして値段をつけてからご連絡します」

「すみません、あまり価値がないかもしれませんが、よろしくお願い致します」

確かに内容的にはあまり価値がないものが多く、処分代も考えなければなりません。

古書の価値の多くは『古書買取後にまた売れるかどうか』にかかっています。
シミや破れていたり、ラインマーカーで書き込みがあったりすると次に売りづらくなるので価値が下がります。本を開いて確認する際にまず蔵印を確認し、パラパラとめくっていき、書き込みを探します。

書き込みには、必ず赤鉛筆を使う人や、定規で線を引く人など持ち主の癖が出るものです。書き込みだけでなく、ページの端を折る癖が見つかった時はたいてい他の本も同じように端が折れている場合が多いものです。

ましてや今回のようにご主人が亡くなって奥さんが売るというケースの場合が多いので、奥様もどのような癖が本に現れているのかを知らずに古書店に頼むことになるのです。

今回の買取りは、今までで一番印象に残った癖が本に現れていたのでした。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

ポストイット・付箋は大事なところへのマーキングだとしたら、
蔵印は自分の所有物だということを知らしめる縄張り意識のようなものでしょうか？

エコの観点から「ポストイット自身紙だから無駄遣いしたくない」とポストイットを使わず、直接本に書き込みをする人がいます。

しかし、書き込みより、ポストイットだと剥がれるため、「次に読んでもらいやすくする」というエコのためにはよいのです。

蔵印もポストイットもお金がかかるからしないというエコの観点もありうるでしょう。

今回引き取ってきた本をペラペラとめくっていて驚いたのが、そのマーキングの仕方とエコの観点でした。

重要なページ、重要な箇所に何が付いていたかというと

なんと、

ご本人の『鼻毛』。

本を読みながら無意識にも抜いているのでしょう？抜いた時に毛根ちょっとがついていればそれが粘着となってポストイットの代わりになっているのです。自家栽培？…まさに究極のエコと言えるのではないでしょうか？

もし、その鼻毛でDNA鑑定をしたら、その人の持ち物であることがわかるため、蔵印よりはるかに強力な縄張り意識？を感じます。

ペラペラと本をめくると現れる鼻毛と言うマーキング。

「うへっ！汚い」と思いつつも次に読む方のためを考えると取り除かなければなりません。

「すぐ取り除けてポストイット剥がすより楽かも」と、もしかしたらご主人は剥がす人のことを考えていたのか？と妙に感心することもあり、しばらく鼻毛と格闘していました。

何百冊と調べていくうちに、明らかに鼻毛ではない脛毛のような毛も使われていて、鼻毛不足があったことを察せられます。

また、ある一生をかけて読んだのであろう大型全集の最終巻に近づいていくと、鼻毛もだんだん白髪となっていき、毛根の粘着も薄くなって本からヒラヒラと力なく落ちていくのでした。

そのうち、私は白い鼻毛たちに哀愁さえ感じるようになっていました。

『持ち主の癖、そして生き様がこのように強烈に出ている現場がいままであったであろうか？』

私は、古書の価値と言うより、ご主人の生きてきた証としての古書を評価したくなったのです。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

「こんにちは。先日お伺いした大山堂書店です。古本見積についてですが…」

「はい、いくらになりますか？　書き込みとかありましたでしょうか？」

「いえ、書き込みはないのですが、その…立派な鼻毛が…」

と電話で私が感心したことを伝えようとしたところ、

「あ！」

と、奥様から奇声のような声があがりました。ご主人が本を読んでいた時の光景が思い浮かんだのでしょう…。

「あの、主人の癖でしたの！　もうお金はいりません。ガチャッ。ツー　ツー」

と、よっぽど恥ずかしかったのでしょうか？
一方的に電話を切られてしまいました。

処分するならタダで次の人に譲りたいというご主人なりの配慮がここまで行き届いていたことになります。

一連のご主人の思いに感心はすれども、古書店としてはこの鼻毛ポストイットが流行らないことを祈っています。

どんな癖のある本でも古本見積いたします。

大山堂書店古本見積・古書買取専用連絡先
http://taizandou.com
フリーダイヤル　0120-645-410

※五月は店頭お買上のみ全品20％引きセールしてます。